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zoom RSS 偽りの襲撃者 サンドラ・ブラウン著 集英社文庫:「でも、この惹句に釣られてはいけない。」

<<   作成日時 : 2017/02/27 12:59   >>

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CLAUDIO BAGLIONI NIPPON/クラウディオ・バリオーニ・ニッポン
記事執筆:Letterina

帯に書かれている「驚愕のどんでん返し!!」のうたい文句に
引き付けられて、いかにも女性作家のラブロマンスとおぼしき
ラブリーなラベンダー色の表紙のこの本を手に取ってみた。
女性が主人公のロマンス物と思いきや、中身は公私ともに
複雑な事情を抱える警察官(本作ではテキサス・レンジャー)が
孤軍奮闘して事件を解決に導くという、犯罪捜査+サスペンス
+恋愛小説という、かなり欲張った内容の“人気女流作家の
野心作”であった。

主人公のクロフォード・ハントは5歳の娘ジョージアの親権を、
亡き妻ベスの両親と巡り係争中である。
ちょうどその裁判中、法廷に乱入してきた仮面の人物が銃を
乱射、裁判の判事を務めていたホリー・スペンサーは
クロフォードのとっさの行動で辛くも何を逃れる。
個人的なつながりは差し控えるべき裁判の当事者同士が、
さらに銃撃事件の被害者、捜査官という複雑な立場に替わり、
クロフォードとホリーの恋愛感情があいまってストーリーは
進んでいく。

とはいえ、物語は思ったほど複雑な様相は呈していなかった。
事件の黒幕とおぼしき人物はかなり早い段階で登場するし、
クロフォードの足を引っ張る巡査部長のニール・レスター、
レスターの腰ぎんちゃくニュージェントと、よくいる登場人物を
配して、良く言えば明快に、悪く言えば単純な展開で、少々
拍子抜けした印象であったのも事実だ。

なにしろ最後のページまで読んで、(それで、帯にある驚愕
のどんでん返しっていうのは・・・・・?)と考え込んでしまったのだ。
多分、(いや、きっと)そのどんでん返しとやらは、クロフォードの
舅ジョーが物語終盤まで握っていた切り札なのだろうが、
それは驚愕に値いするようなネタではなかった。
要するに小説に必要なエッセンスの一つであり、とても
“驚愕の”と仰々しく表現するようなトリックではない。

つまりわたしは出版社のセールストークにだまされたのかと
しばし考えをめぐらせたのだが、確かに期待したような
物語をひっくり返すような大仕掛けはなかったものの、
楽しんでこの小説を読み終えたのは間違いない。

このところピエール・ルメートルの「物語の根幹をぶっ壊す」ような
メガトン級のどんでん返しがあるミステリー小説を読んで
いたせいか、単なる「プロットの内のひとつ」のような小粒な
どんでんではわたしはひっくり返らなくなっているのだ。

この過剰な期待は帯の惹句のせいであるのは間違いない。
もし帯にこの「驚愕のどんでん返し!!」の文字が無ければ
これほど内容に意外性は求めなかった。
もっとも、この文句が無ければこの本を手にすることも
なかったのだが。

マッチョな警官の物語に関わらず、表紙はヌードの女性と
菊の花の写真のコラージュである。
内容と表紙が全く一致しない。
そして読み終えて、日本語の題名「偽りの襲撃者」も本書の
内容を的確に伝えてはいないように思えた。
襲撃者はテーマではないのだ。
英語の原題Frictionは、摩擦、あつれきといった主人公
クロフォードの状態そのものを現している。
出版社はもう少しこの本に対するアプローチを考えるべき
ではなかったのか?

作者のサンドラ・ブラウンはアメリカのベストセラー作家で、
ロマンス小説の大家だそうだ。
わたしには本書が初めてのブラウン作品だが、すでに彼女の
小説を知っているファンにとっては男性の捜査官が
主人公の本作は新鮮に映るはずだ。
だから版元も以前の作品とは違うのだ、男性の読者にも
充分読み応えがあるのだ、ぜひ手にとってくれ、と新規の
読者に向けた営業努力をするべきではないかと思う。

少なくとも男性読者はこのラベンダーカラーの表紙が書店に
平積みになっていても目もくれないだろう。
もしくは、「驚愕のどんでん返し!!」に目を留めた気の毒な
ミステリー好きが、読み終わってすぐさま中古品買取店舗を
ネットで検索して、手にしたこの本を処分するのが関の山だろう。

妙な思い込みをしなければ、実は面白い小説だった。
裏に潜むどろどろした複雑な人間関係や、目を背けるような
残酷なシーンもない、ハリウッド映画の原作本としては
うってつけの作品だと思う。
もし映画化されたら、主演のクロフォード役の俳優はきっとスターに
なるだろう。
そう、この小説は「視覚に訴える」華やかなテキサス・レンジャー
物語であったのだ。

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