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zoom RSS ひそやかな悪夢 ノーラ・ロバーツ著 扶桑社:注意!ミステリー小説にあらず

<<   作成日時 : 2017/04/21 12:48   >>

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CLAUDIO BAGLIONI NIPPON/クラウディオ・バリオーニ・ニッポン
記事執筆:Letterina

1998年アメリカ、ウェストヴァージニア州の片田舎。
もうすぐ12歳の誕生日を迎えるナオミは、ある日父親が
林の奥の地下室に女性を監禁しているのを偶然発見する。
彼女の父親トーマス・デイヴィッド・ボウズは家族に知られる
ことなく、何人もの女性を連れ去り、暴行した揚句殺害している
連続殺人犯だった。
父トーマスの逮捕後、ナオミは母と弟メイソンとともにおじの
セスのもとへ身を寄せるも、執拗なマスコミの取材攻勢に
苦心していた。
ノンフィクションライターは事件を扱った本を出版し、映画まで
制作されたのである。
映画公開を数週間後に控えたある日、夫の精神的呪縛から逃れる
事が出来なかった母のスーザンは自ら命を絶ってしまう。

2016年ワシントン州サンライズの町、コーヴの断崖に立つ
古い屋敷をナオミは衝動買いする。
カメラマンとして独立し、金髪で長身の目を見張る美しい女性に
成長した彼女は屋敷の改修のため、地元の建築業者や造園業者と
交流を深め「崖の上の幽霊屋敷(幽霊は単なる噂)を買ったよそ者」
から、次第に地域に溶け込んでいくという筋立てで物語は進んでいく。

ナオミ(単なる身目麗しい女性ではなく護身術にも長けていて、
カメラマンの見習い時代、横暴な雇い主にパンチを喰らわせたフ
ァイトも持ち合わせている)と、美形だが見た目は少々むさ苦しい
(スーツ・ネクタイ着用が大嫌い)自動車修理工のサンダーを中心に、
主人公は過去に受けた事件の衝撃、そして「連続殺人犯」の娘という
変える事の出来ない現実を抱えコーヴの町の住人達に支えられ、
自己再生を図っていく。
人に背を向けるのではなく、人の輪に入る。人は誰でも幸せになる
権利をもっているのだから、と。

うがった見方をすれば、「世の中みんなこんな善良な人間ばかりで
はない」と、文句の一つも言いたくなるほど登場する人物達は
フレンドリーで暖かい。
特にサンダーだが、「こんないい男が結婚せず、恋人もおらず
30歳過ぎまでフリーでいるわけがない」と突っ込みたくなる。
そしてこの手のロマンス小説の男性の典型が“度量の大きさ”
に尽きるのが実によくわかった。
以前サンドラ・ブラウンの「偽りの襲撃者」について書いたが、
あの作品の男性キャラクター、クロフォードの描写がサンダーに
よく似ている。
http://claudiobaglionifanblognippon.at.webry.info/201702/article_18.html
ダイナミックでセクシー。ひたすらたくましく、線の細さは一切感じない。
迫りくる悪人から、ヒロインをお姫様だっこして守りぬくタイプである。
日本女性に理想の男性を尋ねるとおおむね「優しい人」というセリフが
返ってくるが、アメリカにおいて優男(やさおこと)は理想の
パートナーの範疇には入らないようだ。

ところで、物語始めの父親が犯した連続殺人事件はその後
どうつながるのかというと、これは後半に入らないと続きが見えない。
この小説、出だしはいっぱしのミステリー仕立てなのだが、
実は父親の犯罪そのものではなく、それによって傷ついた主人公の
人生の立て直しがメインテーマなので、その後ノエミの周りで
起きる連続殺人はストーリーの味付けに過ぎない。
(犯人は読者にすぐわかるようになっているので、犯人探しも物語の
主軸ではない。)

作者のノーラ・ロバーツは「ロマンス小説の女王」の異名をとる
小説家で、全世界で4億部を超える売り上げを誇る人気女性作家
だそうだ。
(わたしにとってのロマンス小説の女王はジュディス・クランツであった
のだが、時代はすっかり変わってしまったようだ。)
魅力的な登場人物たちと、セリフ中心の文章構成はハリウッド映画や
人気テレビドラマシリーズを見ているような華やかな印象だが、
情景描写の多くがセリフで片づけられてしまうのは物足りない。

ファンにとってはおなじみの文体でも、わたしのように初めて
ロバーツ作品を読んだ人間にとっては「なにもここまで会話で
処理しなくても」と、最初は少々不満であった。
ただ、いったんページをめくると確かにこの手の小説は手早く読み進め
られるし、人物のセリフが頭の中に響いてきて感情移入しやすい。
作者の人気の秘密はこんなところにもあるのではと、感じた小説であった。
ただし、男性にはあまりおすすめできない。
「こんなに都合のいい話、ありえないよ」と思うのが関の山であろうから。

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