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zoom RSS 完璧な家 B・A・パリス著 ハーパーBOOKS:文句なしの五つ星ホラー作品

<<   作成日時 : 2017/04/24 12:56   >>

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CLAUDIO BAGLIONI NIPPON/クラウディオ・バリオーニ・ニッポン
記事執筆:Letterina

恐い恐い恐い恐い。
悪魔のような、いや悪魔そのものと結婚し、新居に監禁され
る新妻の物語である。
悪夢の舞台はイングランド南東部サリー州の高級住宅地
スプリングイートン。
全寮制女学校に通う17歳のダウン症のミリーの姉、グレースは
妹想いの32歳のキャリアウーマン。
グレースには結婚を前提に2年間一緒に暮らした男性がいたのだが、
結婚後にミリーとの同居が待ち受けていることに耐えられなかった
恋人は彼女のもとを去ってしまう。
自分を愛し、なおかつ発達障害のある妹も受け入れてくれる度量の
ある男性はいないものか?
いたのである。恋人と別れた1年半後にグレースの前に現れた、映画
俳優ばりのハンサムで、有能な弁護士ジャック・エンジェル40歳。
洗練された物腰は、通りすがりの男性すらも振り返るほどの
魅力にあふれている。
出会ってすぐにプロポーズされ、結婚、郊外の新居に移り住むこと
になった。

だが結婚式当日から不吉な出来事が起こる。
花婿のジャックは式が始まる前にグレースの部屋を訪ねてくる。
母親の形見のアクセサリーを届けに来たのだ。
“式が始まる前に花嫁を見るのは縁起が悪い”ということわざが
あるのだが、ジャックは意に介さない。
そして事件は起きた。
花嫁の付き添いとして式に参加していたミリーが階段から落ちて足を
骨折してしまう。救急車でミリーが搬送された後、グレースは苦渋の
選択として妹抜きで挙式を続けた。妹よりも夫となるジャックを優先
したのだが、この選択がその後の彼女の人生を狂わせることになる
とは夢にも思わなかったのである。

創作のみならず、現実に監禁事件はたびたび報道される。
昨年3月には大学生が埼玉の女子中学生を2年間拉致監禁
していた事件が発覚、2000年には新潟で少女を9年に渡り閉じ込めて
いた男が逮捕された。また、2012年に明らかになった尼崎事件のように
複数の監禁致死事件が明らかになるなど、「事実は小説より奇なり」の
世の中である。

フィクション、ノンフィクションとも事件の背景はそれぞれ違えど、犯人の
人格には共通するものがある。
それは、人の痛みや苦しみに関心を持たない、人間的な感情が決定的に
欠如した精神の持ち主ということだ。

ジャックは結婚を機にグレースに退職を迫り、外部との交際を徐々に
断ち切るように仕向ける。そして新婚旅行で訪れたタイのホテルでの
一騒動をきっかけに、グレースが精神病患者であるかのように周囲に
知らしめ、彼女が何を訴えても人々はグレースの言葉に耳を貸さなくなる
よう周到な作戦を張り巡らすのである。
「夫は母親をあやめた殺人者で、自分を監禁しやがて同居する妹を
地下室に閉じ込めいずれ死に至らしめるつもりだ」などと妻が他人に
口にしたところで、虐待された女性の弁護を専門にする有能な弁護士の
自分に火の粉が降りかかることが決してないように。

実際にはグレースはずっと家に閉じ込められているわけではなく、ミリーに
面会するため外出したり、ジャックの仕事仲間やその妻達を自宅に招いて
パーティーを開いたりと、“監禁”よりも“軟禁状態”と言ったほうが
正しいのだが、外出先でも常にジャックの監視下にあり(この男、外出先の
女子トイレにもついてくる)グレースは外に向けて助けを求める事が
全くできないのである。

抜き差しならない状況の中、ミリーが面会にやって来た姉に突破口となる
「ある物」を手渡すのだが、果たしてグレースはこれをいつどうやって
使うのか?
ジャックの獲物が実は自分ではなくミリーだと知った彼女が、究極の決断を
下して行動を起こす200ページ後半を過ぎたら、時間を取って最後まで
一気に読み切ったほうがいい。

ピエール・ルメートルの「その女アレックス」では、本編で地味な風采の
アルマンが物語のフィナーレで重要な役割を演じてみせ、あの作品を
忘れ難い名作にしたが、本作にもラストシーンを締める大事な脇役がいる。
読者にカタルシスを感じさせる結末の描写は実に見事だ。

作者のB・A・パリスはイギリス出身、フランス在住で夫とともに語学学校を
経営、そしてなんと本作がデビュー作というから驚きである。
イギリスのアマゾンのレビューが高評価で、すでに全英で100万部の
ベストセラーであることがうなずける。
わたしも最高点の星5つを献上したい。

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