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zoom RSS ミルク殺人と憂鬱な夏 F・クルプフル、M・コブル共著:笑いを誘う粗忽者(そこつもの)警部

<<   作成日時 : 2017/04/25 17:47   >>

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CLAUDIO BAGLIONI NIPPON/クラウディオ・バリオーニ・ニッポン
記事執筆:Letterina

本書の帯の惹句にはこう書かれている。
「不器用、迂闊、恐妻家!それでも事件は解決します」
うむ、間違いない、この宣伝文句は嘘じゃない。
ここ何冊か、帯の歌い文句が適切な内容紹介になっていない小説を
つかまされて、憤懣やるかたない思いだったのだが(版元の
担当編集者は何を考えてあんなとんちんかんな文章を帯に
のせるのだろう?)このドイツの人気シリーズの警察小説は
正しく日本の読者に紹介されているようだ。

クルフティンガー警部56歳、ドイツ、バイエルン州オーバーアルゴイ郡の
小さな町アルトゥスリート在住。
息子(27ページではマークス、149ページではマルクスと表記、発音は
マルクスのほうがいいと思う)は大学で心理学を専攻しており実家
を出ているため、今は妻エリカと二人暮らし。
地元の音楽隊では大太鼓を担当している。
父親も警察官だったので、親子二代の警察務めである。

めったに殺人などという大きな事件は起きないのどかな田舎町で、
しかもよりによって自分の家の近所で起きた事件に駆り出され、
この中年警部の活躍とあいなる。
ところがこの人、救いようのないおっちょこちょいなのだ。
犠牲者の葬儀で怪しげな人物をを発見するも、追跡中に掘った
ばかりの墓穴に落ちて不審者を取逃がしたり、においの強烈な
チーズを真夏の炎天下、交通課の車両に一日中置きっぱなしに
して同僚の怒りを買ったり、容疑者の山小屋へ向かう途中、
悪路に足を取られ靴が抜けなくなったり(部下に笑われている)、
夜、独りで張り込みをするために山ほど夜食を準備しておきながら
飲み物を忘れたり(バカ野郎と自分を罵っている)と、書き出したら
きりがないのでこの辺にしておく。

私生活も妻の機嫌を取ったり、妻の旅行中に馬の合わない医師、
ラングハマーと一緒に料理を作って「男子会」を開いたり
(クルフティンガーの希望ではない)と色々笑わせてくれるエピソード
満載である。
テーマが殺人事件なので、ともすれば重くなりそうなストーリー展開に
なりそうだが、本作はほとんど“お笑いネタ”に彩られているのが、
普通の警察小説との大きな違いだ。
中でもクライマックスの空港での大捕物のシーンは、場所が男子トイレ
だけにちっとも臨場感がない。
このシーン「ラオコーン像のように」と書かれていて、想像しただけ
で思わず吹き出してしまった。
ラオコーン!ヴァチカン美術館にあるあの有名なギリシャ彫刻が、
トイレのドアを押し合い圧し合いしている刑事と通りすがりの一般人の
比喩にされている!!
この彫刻が!!
画像
  毒蛇に噛み殺されるトロイアの神官ラオコーンと彼の息子達

ともあれ事件は解決、そう、帯の惹句どおりに物語は展開する。
そそっかしいクルフティンガー警部ではあるが、決して無能では
ないのだ。
鋭い洞察力、本人も自信を持っている記憶力、だてに50の坂道を
超えているわけではない。
ところでこの小説、2012年にテレビドラマ化され大好評だったそうだ。
番組の視聴はできないが短い映像がある。このドラマなんとセリフが
全編アルゴイ方言で放送されたそうだ。
ちょっと見てみよう。



うう、こりゃだめだ、司祭の祈祷の部分と、最後の犯人追跡の部分しか
聞き取れない。
そもそも南部バイエルン方言はスイス・ドイツ語と同じくらい訛りがきつく、
テレビでその地方の人がインタビューを受けている映像では
字幕スーパーがつくほどなのだ。
これを全国放送したARD(ドイツ第一公共放送)は相当勇気が
必要だったろうと思われる。
視聴率は稼いだようなので、小説のセールスにも一役買ったことだろう。

ところで、クルフティンガー警部のファーストネームはなんと
いうのだろう?
この作品の中では妻のエリカ以下、登場人物はフルネームで
表記してあるのだが、どういうわけか主人公の警部の名がどこにも
書かれていないのである。
ドイツ語圏の読者も疑問に思ったらしく、質問サイトに「クルフティンガーの
ファーストネームを教えて」という項目があったので調べてみると、
2016年刊行のシリーズ作品「Himmelhorn」で初めて
Adalbert Ignatius(アーダルベルト・イグナティウス)というファーストネームが
出てくるとのこと。
石器時代並みの古めかしい名前である。
(それまではA・I・クルフティンガーという表記のみだそうだ。)

画像




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