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zoom RSS 人生を変えてくれたペンギン トム・ミッチェル著:ペンギンの救世主

<<   作成日時 : 2017/04/17 12:59   >>

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CLAUDIO BAGLIONI NIPPON/クラウディオ・バリオーニ・ニッポン
記事執筆:Letterina

マゼランペンギンのフアン・サルバド(正式名フアン・サルバドール:
救世主ヨハネの意味)はウルグアイのプンタ・デル・エステの海岸で
重油まみれの瀕死の状態になっているのを、アルゼンチンの
全寮制学校の教師としてイギリスからやってきた若き日の筆者に
救出される。
悪戦苦闘して重油を洗い落したペンギンを拾った海岸へ帰そうと
するのだが、なぜかこのペンギンは海に入らず、彼のあとを
ついて来てしまう。

一度助けてやった命、置き去りにするわけにもいかず、トムは
ペンギンを連れてウルグアイからアルゼンチンへの国境越えを
決行する。
ペンギンを隠した袋を抱え(もちろん生きたペンギン)、バスにゆられ
水上船に乗り、ウルグアイの入国管理局を突破するくだりは圧巻。
実は物語の一番の見せどころが、このペンギン連れの国境越え
なのである。

「ふたりが最高の親友になるまでを綴った実話」と帯にあるので、
ペンギン中心の動物物語を思い浮かべるが、内容はペンギンを巡る
人々と主人公の高校教師の精神成長に関するスートーリー展開に
なっている。
ゆえに、“心温まるペンギンのユーモラスな生態と感動のエピソード満載”
を期待して読み始めると肩透かしを食らうので若干注意が必要だ。

アルゼンチンと聞いて思い浮かべるのはだいたい次のような事柄だろう。
タンゴ、ワイン、牛肉、それからサッカー選手のマラドーナ、メッシなど。
アルゼンチンは2001年に国債がデフォルト実行(債務不履行)されて
事実上国家として経済破綻するなど、今現在も不安定な金融情勢を
抱えた国である。

著者がこの国に滞在していた1970年代は混乱の政権不信の只中にあった。
1976年のクーデターで軍が政権を握り、インフレによる通貨切り下げで
実勢価格がいくらなのか分からなくなったほどの経済混乱の収束、
インフラ機能の復活など、若干の落ち着きは取り戻したものの、
外国人が住むには何かと苦労の多い土地であったのである。

(尚、この本には記述がないが、当時の軍事政権は反体制派の
左派系活動家や学生を“ゲリラ掃討”の大義で処刑していた。
連行した「反政府主義者」の手足を拘束して、高度数百メートルに
上昇した軍用機から森林めがけて生きたまま突き落としていた。
数千人の逮捕者が今もって行方不明となったままである。)

この物語でとりわけ美しいエピソードは、ボリビア出身のディエゴ・
ゴンザレスとフアン・サルバドとの“シンクロナイズドスイミング”だろう。
きゃしゃな体つきで運動もいまひとつ、勉強も苦手、落ちこぼれを絵に
描いたようなディエゴが実は驚くべきスイマーだったことが、フアン・サルバド
の初めてのプール体験で発覚する。

自信を得たディエゴの学校対抗スポーツ大会の水泳競技で見事優勝する
16章はわたしの一番のお気に入りである。(もちろんトム本人の
一人旅も若者の人格形成、人間的成長として読みごたえはあるが、
フアン・サルバドと一緒の旅ではない。)

そして永遠の別れは実にあっけない。
トムの旅行中に預けていた友人宅でフアン・サルバドは旅立ってしまう。
動物との付き合いはつねに短いものなのだ。

とはいえ、鳥類に関する長期間のノンフィクションも他にある。
例えばクレア・キップスの「ある小さなスズメの記録」は12年に渡る
スズメのクラレンスの驚くべき才能を記述した実話であるし、
アイリーン・M・ペパーバーグの「アレックスと私」は31歳の若さで(!)
他界したヨウム(オウムの一種)の30年間の実験記録が綴られている。

本書はペンギンという、本来ペットには適していない種類の鳥類が、実は
人間と交流する能力にいかに長けていたかを証明する貴重な一冊で
あることは間違いない。

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