Claudio Baglioni Nippon

アクセスカウンタ

zoom RSS おやすみ、リリー スティーヴン・ローリー著:あなたはこのストーリーの飛躍について行けるか?

<<   作成日時 : 2017/05/08 12:50   >>

トラックバック 0 / コメント 0

出版前のゲラ刷りを読んだ人達の書評はどれも好評である。
だからこそ、あまのじゃくのわたしはあえて異議を唱えたい。

主人公はエドワード・フラスク。
愛称テッド。同性愛者で42歳のフリーランスの物書き。
6年間付き合った恋人ジェフリーと別れ、セラピストの
もとに通院中。
抗不安剤のジアゼパムを服用している。

愛犬リリーは12歳のダックスフント。人間だと84歳。
飼い主のテッドはリリーの頭部に腫瘍ができているのに
気がつく。
ただし、本書では“腫瘍”とは言わない。
ここでは“タコ”と呼ばれている。
タコ。八本足の。

この小説、半自叙伝ということでノンフィクションではない。
もちろん作者のプロフィールや個人的体験が、ストーリーの
根幹に反映されてはいるのだろうけれど、あくまでも創作だと
いうことを頭に置いていたほうがいい。
「愛犬を真摯に看病する飼い主と、腫瘍と戦うけなげな老犬」
という単純なストーリー構成とはなっていない。
むしろ、そういったよくあるお涙ちょうだい実話になることを
(かなり)意図的に避けているふしがある。

なにより驚かされるのが(わたしはあきれた)、作者のディズニー
映画ばりの突飛な発想だ。
この小説を真剣に読んでいると、実は途中でばかばかしくなってくる。
固唾を飲んでテッドとリリーの行く末を注視している読者を、著者は
いったいどこにつれて行くと思う?
なんと、ヘミングウェイ(老人と海)とメルヴィル(白鯨)の世界だ!
タコを退治するため、テッドは腕にタコの刺青を入れ(なんでまた
そんなことを)リリーをつれて船に乗り、外洋へタコ退治に行くのである。
・・・・・・・わかりますか、この説明?

冒険小説と抗不安剤に毒され、ラリっているのがこの本の主人公である。
「タコ人間との死闘」のシーンがこの本のクライマックスなのだ。
リリーは口に魚おろし用のナイフをくわえて、テッドの脚に絡みついた
タコの足を突き刺し、さらに銛打ち砲を使って(ここまでくると、もう犬
ではない)水中に逃げるタコを銃撃するのである。(犬のリリーが)
・・・・・・ついてきてますか、みなさん?

リリーの苦しみを長引かせることを拒否したテッドの決断には
「よく決心した」と言いたい。
眼の玉が飛び出そうな高額な動物病院の請求金額には驚愕するし
愛犬を失った膨大な喪失感はわたしとて理解できる。
(わたしの場合は犬ではなく猫であるが)
飛躍する物語は、愛する老犬の現状から目をそらす主人公
テッドの自己逃避そのものだ。
だからこそ彼はセラピストと薬を必要としているのだろう。

書評で高評価をつけている人達はこの摩訶不思議な展開を
すんなり受け入れられたのだろうか?
「老犬を、見送る、ということ」という帯の文章に引き付けられて
この本を手に取った読者は、誰もがこの人を食ったような内容の
小説に理解を示すことができたのだろうか?
途中で「これはちょっと・・・」と読むのを止めてしまった人もいるのでは?
結末だけ読んで、レビューを書いた人もいるのでは?
読んで判断するのが一番であるが、わたしはあえて読むことを
お勧めする本とは書かないことにする。
「がっかりした」という声があちこちから聞こえてきそうだから。

記事執筆:Letterina

画像

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

おやすみ、リリー スティーヴン・ローリー著:あなたはこのストーリーの飛躍について行けるか? Claudio Baglioni Nippon/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる