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zoom RSS 死んだ男の妻 フィオナ・バートン著 マグノリアブックス:あまりにも子供を愛しすぎた夫婦

<<   作成日時 : 2017/05/22 17:39   >>

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この小説、なかなかの拾い物である。
作者のフィオナ・バートンはイギリス出身のジャーナリストで、
これが処女作とのことだが、デビュー作とは思えぬほどの
出来栄えである。

2006年10月イングランド南部のハンプシャー州。
20代のシングルマザー、ドーン・エリオットの2歳に
なる娘ベラが自宅の庭から忽然と姿を消してしまう。
事件を追うハンプシャー警察の警部補ボブ・スパークスと
彼の捜査チームは青いバンに乗車して荷物の配達を
していたグレン・テイラーをベラ誘拐犯と断定、
裁判に持ち込むのだが、法廷ではチャットルームの
囮捜査が証拠として認められず、グレンは
無罪放免とされた。

小説はこのグレンの妻ジーン・テイラーの自宅に、
デイリー・ポストの敏腕女性記者ケイト・ウォーターズ
が独占取材をものにするために押しかけるシーンで
始まる。
実はイントロ部分はベラ誘拐事件から6年が経過した
2010年で、グレンはバスに轢かれて最近死亡した
ばかりである。
警察から賠償金が支払われていることも最初のほうで
明かされているので、テイラー夫妻が無実を勝ち
取ったことも読者は早々に知ることになる。

事件の結果を物語の最初で読者に知らしめることで、
“では、なぜそうなったのか”と、ストーリーの
行き先に集中させるうまい書き出しなのだ。
現在と過去が交互に書かれるので、ストーリー展開は
それほど早くなく、むしろじれったいくらい詳細に
登場人物の描写に手をかけている。

誘拐犯の嫌疑をかけられた男の未亡人である主人公
ジーン(彼女だけ一人称で語られる)、捜査ミスの責任で
降格処分となり、ベラ捜索チームから外された失意の
警察官ボブ・スパークス、特ダネを追うことに生きがいを
見出している女性ジャーナリストのケイト・ウォーターズ、
そして元エリート銀行員でジーンの夫である
“転落した男”グレン。

読みどころは、弱々しく、自分の意見も持たず、何の主張も
せず、ただグレンの後ろに控えている「夫に支配された妻」
の構図がいつの間にか「ハイエナ並みのジャーナリストを
手玉にとり、夫の支配から抜け出した、ただ一人事件の
真相を知る妻」という、主人公の恐るべき成長ぶりが
じわじわと浸透していく部分だろう。

いや、主人公ジーンが明晰な女性であることは最初から
わかっている。
それどころかとてつもない秘密を抱え、それを決して
不用意に漏らしたりしない鉄壁の精神力の持ち主
なのである。
だが、彼女の周囲がそれをわかっていない。
(ひょっとしたらジーン本人も自分自身を理解
していないのかも)。

警察の捜査ミスも、実際にありそうな設定になっている。
スパークスのベテランゆえの思い込み、優秀な上司を
指揮官にしたために部下からトップへ意見を通しづらい
警察の体質、捜査の行き詰まりをなんとか打開するため
にとった、仮想空間での法律違反ぎりぎりの誘導尋問、
捜査ではグレンが真犯人だとは確定できないのである。

ジーンは本当にグレンがベラの誘拐犯だと知っている
のだろうか?
ベラは何者かに連れ去られ、どこかで暮らしているの
だろうか?

ジーンの「わたしたちの赤ちゃん」という言葉の
意味が最後の最後に明かされるが、この一言が
衝撃を伴ってエンディングにつながる。
ベラは沢山の人々に愛された。
それゆえの悲劇だった。

記事執筆:Letterina

フィオナ・バートンのホームページ
http://fionabartonauthor.com/

Amazonのバートンのページ
https://www.amazon.co.jp/Fiona-Barton/e/B01AUOPU8W


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