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zoom RSS 眠る狼 グレン・エリック・ハミルトン著 ハヤカワ文庫:男惚れするニューヒーロー

<<   作成日時 : 2017/05/10 12:41   >>

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バン・ショウ。
アメリカ陸軍のレンジャー部隊軍曹、赴任先の
アフガニスタンのカンダハルで数週間前に負傷、
ドイツの陸軍病院で静養していたが
長年音信不通だった育ての親代わりの祖父、
ドノバンから帰宅を促す手紙を受け取り10年ぶりに
故郷の土を踏むことになった。

ところが家に足を踏み入れるなり、被弾して意識不明の
祖父の姿を目にする。
しかも祖父を撃った犯人はバンが家に入った時にはまだ
犯行現場にいた。
病院に搬送された祖父、愛称ドノは意識が戻らない。
捜査を担当するシアトル警察の刑事、ゲリンとカネリスに
容疑者の心当たりはないと答えたバンであるが、実は
祖父ドノはとんでもない経歴の持ち主だった。

前科者、犯罪者、悪党。どんな呼び名でも結構。実に
にぎやかな逮捕歴がある。
強盗罪、窃盗罪、要するに泥棒だ。しかも十代のころからの
札付きのワルである。
こんな祖父にバンは育てられた。ただしドノの服役中は
里親の元にいた。
(シングルマザーだった母モイラとは6歳の時に死に別れた。
父親が誰かは知らない。)要するにバンの家族は祖父の
ドノだけだ。
それからこの祖父とは年齢差たった36歳である。
(この年齢差については終わりまで忘れないように)
続柄は祖父と孫でも、実際はほぼ父と息子のような
関係なのだ。
そしてアイルランド出身のこのワルな祖父は、息子のような
孫に己の犯罪知識と泥棒技術を継承させるのである。
だからこの物語の主人公バン・ショウは、優秀な軍人で
ありながら泥棒の血筋を引いた正統派のダークヒーローだ。

祖父の後ろめたい経歴もあり、警察にだけ銃撃事件の
捜査を任せるわけにはいかない。
バンは短い休暇中になんとか犯人を見つけようと、
祖父のかつての仕事仲間達を尋ねる。
祖父の最後のヤマは何だったのか?
そもそも祖父はなぜ自分を故郷に呼び寄せたのか?
ある出来事がきっかけで、バンは18歳の時に祖父と
関係を絶った。
それ以来連絡もなかったのに。

ドノの古参の仕事仲間、ホリスやコーコランの力を
借りてバンは犯人を追跡する。
ところが行く先々で死体と遭遇する羽目になる。
(しかも絶命して間もない)下手をすると自分が犯人だと
疑われる状況である。

過去と現在をバランスよく散りばめた、読んでいて
飽きのこない小説だ。
顔に被弾の傷跡があるこわもての軍曹ではありきたりだが、
祖父と一緒に泥棒家業の片棒をかつぐ幼少時代のくだりは、
バン・ショウという人間を読者により詳しく理解させる
構成になっている。
脇役の人物造詣も魅力的だし、なにより犯人捜しをする
バンの行動がダイナミックで、スケールの大きな
エンターテインメント小説に仕上がっている。

単なるアクションだけを見せる筋肉系のストーリー
ではなく、ドノの隣人でちょっと風変わりな老婦人アディが
ディケンズの「我らが共通の友」を病室で読む場面、
デイビーとスティーブンソンの墓碑銘をそらんじる場面、
ルースがエンディング近くに歌う古い民謡と、
さりげなく文学の香りもただよう繊細さがいい。

幼馴染のデイビーとつるんで悪さをしていたティーン
エイジャーの頃のエピソードは、エンディングにつながる
大きな出来事だ。
そしてそれこそが、バンが祖父ドノから巣立つきっかけ
にもなっている。
英語のオリジナルタイトルがまさに“その出来事”で
あるのだが、邦題は「眠る狼」(どこから引用してきたのやら)
となっているので、個人的には残念な題名だと思う。
作者グレン・エリック・ハミルトンにとってデビュー作と
なったこの作品の続編もすでに刊行されていて、3冊目が
今年の7月に出るのだとか。
早川書房はぜひシリーズの邦訳を出版していただきたい。
女性から見ても魅力たっぷりなバン・ショウであるが
男性読者には男惚れするくらいかっこいいキャラクターに
違いない。

記事執筆:Letterina

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