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zoom RSS コードネーム・ヴェリティ エリザベス・ウェイン著 創元推理文庫:戦争に翻弄された若者たち

<<   作成日時 : 2017/05/11 13:08   >>

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「キスして、ハ−ディ!キスして、いますぐ!」

戦争はいやだ。戦争は悲惨だ。戦争に善も悪も無い。
あるのは破壊と悲しみと憎しみの負の連鎖だ。
ただ、戦時下だからこその出会いはある。

時代は第二次世界大戦のさなか。
スコットランドの由緒ある家柄の子女である
クイーニーと、ユダヤ人でバイクの販売店
(繁盛店である)を営んでいる祖父を持つマディは、
平時であれば出会いの接点はなかったはずだ。

場所はイギリス空軍メイドセンド基地の通信室。
そこでクイーニーとマディは初めて会った。
ただし、フランスのカレーを目指していたドイツ軍の
飛行機がイギリス上空に迷い込んで来て、
ドイツ語で誘導するできる通信士が必要無ければ
二人が出会う機会はなかった。

クイーニーが着地したフランスで、ドイツ軍の捕虜に
ならなければ彼女を尋問するフォン・リンデン大尉にも
会わなかった。
尋問を監視する秘書役のアンナ・エンゲルにも。
戦争が無ければフォン・リンデンはベルリンの
一流男子校の校長として、教育者の職務を
全うしただろう。
アンナ・エンゲルは化学者への道を選んだろう。
(ひょっとしたらアメリカで)

そしてこんな供述書をクイーニーが書くことは
なかったのだ。
“知っているイギリス空軍の情報を全て書き出すこと。”
クイーニーに抵抗するすべはない。
足首を椅子の脚に縛りつけられ動くこともできない。
なにしろ彼女に失うものはない。
だって、「燃える飛行機の写真」を見せられたから。

第一部はコードネーム・ヴェリティなる人物の視点で、
第二部はキティホークの視点から書かれている。
爆撃用の戦闘機ではなく、輸送用の航空機の
操縦士として働く民間人のマディ、コードネーム・
キティホークが、特殊作戦の非公式職員とし
てフランスに着地(正確には不時着)してから無事に
イギリスに戻るまでの壮絶な体験は、女性ですら
戦闘員として敵の前に命を差し出さねば
ならなかった理不尽な世界を綴っている。

イギリスに帰国したマディは飛行機乗りとして
職務を全うしただろう。
戦時中に身に付けた射撃の腕前を彼女は誇りにし、
それを一生涯呪っただろう。
空を飛ぶ時、彼女はいつも自分の分身と共に滑空
するのだろう。
決して祖国を裏切らなかった友人の魂と共に。

記事執筆:Letterina

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