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zoom RSS 夏を殺す少女 アンドレアス・グルーバー著 創元推理文庫:二つの川が一つになる時

<<   作成日時 : 2017/06/20 07:05   >>

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エヴェリーン・マイヤースはオーストリア、ウィーンの
女性弁護士。
マンホールに落ちて溺死した元小児科医キースリンガーの
事故の調査をするうちに、彼女の先輩弁護士で勤務先の
弁護士事務所の共同経営者ホロベックがマンションから
墜落死してしまう。
二人の死について奇妙な一致点を見出したエヴェリーンは
私立探偵のパトリック(弁護士事務所の経営者クラーガーの
息子)の協力を得て、事件解決の糸口をたどりドイツの
各都市へ車を走らせる。

ヴァルター・ブラスキーはドイツ、ライプツィヒの刑事。
妻のカーリンを病気で亡くし、娘のヤスミーンを男手
ひとつで育てている。
ぜんそく持ちでヘビースモーカー、娘の養育のための
時間を作るため自ら進んで降格を申し出、今は事件
発生直後の証拠保全や書類作成といった雑用に
甘んじている。
それゆえ40代の働き盛りであるにもかかわらず、すでに半分
引退したかのような自己憐憫を抱え、偏屈な中年刑事に
なってしまったようだ。
彼の人生に的確な指摘を与えてくれる妻はもういない。

地位も名誉もある男たちの欲望を満たすクルーザー旅行で、
年端もいかない東欧出身の少年少女たちが残酷な運命を
課せられた時、彼らの精神は自らの命を守るため、
いずこへか消えてしまったのである。
それでも、命があればまだいい。
海岸に打ち捨てられた名もない被害者すらいたのだから。

オーストリアの女性弁護士と、ドイツの刑事が全く別の場所で
別の事件を追っているのだが、複数の事件がいったいいつ
どうやってつながっていくのか、全く予想できない。
エヴェリーンが追う重要人物の青いショルダーストラップの
ミニドレスを着た金髪の少女がカギなのだか、一方で
ヴァルターの追いかける少女は精神病院に収容されて
いるのである。
事件の真相が明らかになるにつれ、繰り返し描写される
エヴェリーンの幼少期の悲劇的な記憶が、物語の基軸で
あることが浮き彫りになってくる。

エヴェリーンとヴェルターが出会うのも本編のかなり後半に
なってからなので、読者はストーリー展開にじらされるの
であるが、異なる国の小さな支流が国境を超えて本流に
入り込み、一つの大きな川となって溢れ出すような爽快感を
感じることができる作品だろう。
作者グルーバーの見事な手並みで、最初から最後まで
緊張感を保ったまま物語に没頭できるのがいい。
続編の「刺青の殺人者」もすでに出版されているので、
登場人物のその後が楽しみである。

記事執筆:Letterina

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