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zoom RSS 死の天使ギルティネはミステリ大賞受賞なるか?:Sダツィエーリ著ハヤカワ文庫

<<   作成日時 : 2017/06/26 07:55   >>

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た、大変だ!大変だ!!
ストーリーがまたもや終わらない・・・!!

さて、イタリアの作家サンドローネ・ダツィエーリの
「パードレはそこにいる」の続編である。
前作でコロンバとダンテが温泉ホテルのプールで
まったりしているところにダンテ宛ての1本の電話
が入り、物語がまだ終了していないというラスト
シーンであった。
本作の設定はそれから2年後である。

イスラム国から犯行声明のあった列車内殺人事件
を捜査するためにローマ県警の女性警官コロンバ・
カセッリはローマ市東部、チェントチェッレにある
イスラミックセンターへ赴く。
(このブログの本来のテーマであるイタリア人歌手
クラウディオ・バリオーニが結婚するまで過ごした
場所がチェントチェッレ地区である。)
センター内に潜んでいた人物と銃撃戦になった
コロンバは九死に一生を得るが、建物の外で大規模
なデモが発生、以前の事件から受けた彼女の精神状態
と、今回の事件の不手際の責任を合わせて、コロンバは
検事総長のスピネッリから一時休職勧告を受ける。

相変わらず高級ホテル住まいのダンテ・トッレだが、
どうやら経済的に困窮している様子である。
大学のセミナーに講師として招聘されるも、その
程度の謝礼では生活が成り立たない。
それにコロンバとは仲たがいをしたらしく、交友関係が
すっかり途絶えてしまっているのだ。
あれほどの強い絆があった二人に、いったい何
があった?

前作でコロンバとダンテの二人に確執を持ちながら
も捜査の過程でコロンバの協力者として変化していく
サンティーニがしょっぱなから登場するが(向こう
一世紀、コロンバとダンテに会いたくないと通告し
ていたにもかかわらず)残念ながら本作ではコロンバ
との丁々発止のやりとりはあまりない。
そして新米捜査官のマッシモ・アルベルティは“サボテン・
ブラザース”と命名されたコロンバの3人の部下の
一人として登場する。
アルベルティは“パードレはそこにいる”の初登場
シーン(27ページ)で「アルベルティ・マッシモ捜査官
です」と自己紹介しているため、(特にビジネスでは
名字を先に名乗る場合が多い)著作の登場人物紹介欄
でもその通りに表記されているのだが、名がマッシモ、
姓がアルベルティである。
本作の「死の天使ギルティネ」の登場人物欄でやっと
“マッシモ・アルベルティ”と書かれることになったので、
少しは出世したかいがあったかもしれない。

また、インターネット上での“違法な捜査”に手を貸す
ギャング団の情報屋、サンティアゴも引き続き登場する。
前回、隠れ家の強制捜査の際逮捕拘留された
彼であるが、またもやダンテの力添えで無罪放免
になった。
最近の犯罪小説にはネット情報の調査が多く描かれ
るので、優秀なハッカーのキャラクターは必要不可欠
である。

本作では特に、コロンバの女性本能が彼女の見え
ざる内面として描かれている部分が興味深い。
パリの爆破事件の影響で別れてしまった元恋人の
エンリーコとの一時的な復縁や、“感じのいい”対テロ
作戦部隊の警視レオとの関わり、そして子供を持ちたい
という彼女の望みは、どれも彼女の壮絶な人生の中
には欠けているピースがあるのだということを読者に
示唆している。
単なる不死身でマッチョなスーパーヒロインではなく、
パニック発作で呼吸が止まってしまうほど脆弱な
部分も持ち合わせた血も肉もあるひとりの女性である
ことをダツィエーリはきちんと書いているのだ。
それにしてもコロンバが“頬骨の位置の高い
東洋風の顔立ち”だとはびっくりである。
わたしはてっきり“誰もが振り返る美女”という前作
の設定で「勇ましいモニカ・ベルッチのばりの風貌」
を想像していたのだが、イメージが大いに変化して
困惑している。

この作品の中、コロンバとダンテは捜査のためにドイツ
へ乗り込むのだが、ベルリンでアンドレアス・フーバーと
いうジャーナリスト兼作家に調査依頼で出会うことになる。
このあたりから幾重にも重なった物語のギアが
一気に加速していく。
特にウルムでの出来事は、コロンバの警察官として
の資質が大いに問われる問題個所だろう。
ドイツ人作家が原因のこの事件はやはり
スピネッリの指摘する「精神的打撃」の影響がある
のではと、気になる部分である。

まだ解決していない「テデスコ」の正体、そしてダンテを
悩ます「弟」問題が、引き続きこの物語に見えない
糸のように張り巡らされている。
前作をまだ未読の場合は、ぜひそちらを読了してから
本作を手にとってほしい。
新作を楽しむための根っこが第1作目に詰まっているから。

この小説は年度末に発表される海外ミステリ大賞受賞作の
最有力候補になるのではと予想している。

記事執筆:Letterina

早川書房のサイト
http://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000013573/
http://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000013574/

来日時の講演会の記事はこちら
http://claudiobaglionifanblognippon.at.webry.info/201704/article_3.html
画像

写真は今年4月イタリア文化会館東京の講演会にて

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