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zoom RSS プリズン・ガール LS・ホーカー著 ハーパーBOOKS:隔絶された世界からの解放

<<   作成日時 : 2017/06/06 12:57   >>

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強烈なファム・ファタールが主人公の「真紅のマエストラ」は
イギリスの女性作家L・S・ヒルトン著作であるが、この
「プリズン・ガール」の作者はアメリカのコロラド州出身
の女性作家LS・ホーカーの処女作である。

21歳になる主人公ぺティは18年の長きに渡り
父親から特殊な教育を受け、一般の社会生活とはかけ
離れた人生を送ってきた。
母親はおらず、親戚も親しい友人もいない。
そんな彼女を残して父チャーリーはある日突然他界
してしまう。
娘宛てに残された父の遺言が開示されるのだが、
遺産を相続するために、ペティには到底受け入れられ
ない理不尽な条件が含まれていたのである。
もし相続を放棄すれば、ペティには住む場所も何も
なくなってしまう。
文字通り裸同然で通りに放り出されてしまうのだ。

自分を助けてくれる人物は誰もいない。
それだけではない。
ペティはそれまでに人間らしいごく普通の生活を
送ったためしがない。
だから父の死後、自由な人生を送れるとしたら何を
するかノートに書き出していたほどだ。
1. ソウ・ポールから出る。
2. 車の運転を習う。
3. 大学に行く。
4. レストランで食事をする。
5. 友達を作る。
6. 映画館に映画を観に行く
7. 恋をする。
8. ニューヨークに行く。
9. ジャンクフードを食べる。
10. 普通の生き方を身につける。

父親以外の人間と関わった事がほとんどない
ペティにとって、他者に対しては人間らしい
感情表現はおろか、日常会話すらままならない
のである。

なぜ父は自分にこれほど常軌を逸した生活を強いたのか?
なぜ父は死後も自分を縛りつける不自然な遺言を残したのか?
謎を解明するため、ペティは3歳まで住んでいた
コロラドへひとり向かうことを決心する。
だがひとりという予定が、大学を休学中の配達のアルバイト
ドライバー、デッカーを巻き込むことによって、いつの間にか
「明日に向かって撃て!」のボニーとクライドのごとく、
“お尋ね者の二人組”状態で東征奔走するはめになる。

父親が娘に「軍人養成教育」を施すという設定は、2011年
ジョー・ライト監督米英独合作の映画「ハンナ」を思い出さ
せる。
映画では娘を人間兵器として育てる父親はその理由を彼女に
伝えて、完璧な兵士として使命を果たすようにしていたが、
この小説はそういった背景が一切不明なのである。

主人公ペティが“実践的な社会生活の訓練”をひとつひとつ
積み上げ、徐々に成長しながら彼女の生い立ちと父の
遺言の謎を解明する様を、読者は一緒に追いかけて行く。
そして人は決してひとりでは生きていけないという、
当たり前の事実を目の当たりにする。

いったいどれだけの人物がペティを手助けしたろう?
デッカーや彼のおじカートやその娘ロクサーヌ、その他
「ひとりぼっちのペティ」に手を差し出している人物
の存在を彼女はどのくらい認識しているだろう?
(“間違った方向の人間”が含まれているにしろ)

そしてつまるところ、「直観はいつでも正しい」という
人生の教訓を改めて与えてくれる。
どんなに厳しい訓練を受けていたとしても、信じられる
のは“その場所状況”よりも“己の直観”なのだ。
「おばあちゃん孝行」が「お母さん孝行」にとって替わるのも、
もしかしたらペティの直観のたまものなのかもしれない。

それにしても350度で30分もキャセロールを焼いたら表面が
炭化して台無しになってしまうと思うのだか、いかがなものか。

“ペティ”とは婦人服のペティートサイズ、つまり小さい、小柄な
という意味であるが、実は音楽好きな作者の趣味から
つけられた名前である。
わたし個人としては80年代のトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ
を思い出す。



記事執筆:Letterina

LS.ホーカのオフィシャルサイト
http://lshawker.com/

表紙イラスト、Watabokuさんのサイト
http://www.wataboku.com/

ハーパーBOOKSのサイト
http://www.harpercollins.co.jp/hc/books/detail.php?product_id=10778

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