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zoom RSS 復讐者マレルバ ジュセッペ・グラッソネッリ、カルメーロ・サルド共著 早川書房:悪運の星の下で

<<   作成日時 : 2017/06/12 07:32   >>

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この世には二種類の人間がいる。
「悪事を働く者」と「悪事を働かずに済む者」である。
“悪人”か“善人”かの問題ではない。
仮に善人であってもその運命が最初から「悪行をなすために」
この世界に送り出されたのであれば、定められた運命に
抗うすべはない。

子供のころから札付きの不良でシチリア出身のアントニオ・
ブラッソ(著者グラッソネッリの本編での名前)は1986年
9月21日に祖父とおじを何者かに銃撃され殺害される。
アントニオが21歳の時である。
地元で強盗事件を起こし、犯罪者の身であるアントニオは
ドイツに逃亡、86年当時はハンブルクでいかさま商売を
営んでいたが、この襲撃犯がシチリアの巨大マフィア組織
コーザ・ノストラが差し向けた暗殺者だったことを知る。
彼らの目的はアントニオの一族殺害。
もちろんアントニオ本人も標的の内である。
だが、彼にはマフィアの意図がわからなかった。
そもそも自分の一族はマフィアとは何ら関わりがない。
そしてその後もブラッソ一族に近い親族が次々と凶弾に
倒れていく。
なぜこんな理不尽なことが起きるのか?

攻撃は最大の防御とばかり、アントニオは祖父に手を下した
マフィアのジュファーとネトーレの二人に復讐するために
シチリアへ帰郷、コーザ・ノストラに敵対する一族を集め
巨大マフィア組織に戦いを挑む事になった。
勝ち目のある勝負ではないと最初からわかっていた。
けれど、何もせずにただ黙って殺害されるのを待って
いるようなアントニオではない。

画像
グラッソネッリの当時の手配写真

「わたしはマフィアじゃありません。信じてください。
そんな人間じゃないんです。」
ナポリの哲学の大学教授、ジュセッペ・フェッラーロに
向かって、服役中のグラッソネッリが言った台詞だ。
マフィア犯罪の囚人に課せられる刑期はほとんどの場合
終身刑である。
グラッソネッリが自分の起こした犯罪を“あくまでもマフィア
に対する個人的報復であり、自分自身は組織の構成員ではない”
と言ったところで、その罪の数々は最高刑(イタリアに死刑はない)
であがなうしかない。
映画「塀の中のジュリアスシーザー」では実際に服役中の囚人を
俳優として出演させていたが、それぞれのプロフィールで
終身刑と字幕にあった出演者は、皆マフィア関係の犯罪で服役
している。

27歳で逮捕、服役するとグラッソネッリは猛烈に勉強を始め、
遂には大学の卒業資格を手にするまでになる。
刑務所の中で誰もが知っている有名なマフィアの元ドン達に
出会い、世の中を震撼させた彼らが実は驚くほど無教養な
人物だったことを知り、学業を身につけたいと渇望するまでに
なったのは、神から与えられた天啓だったのだろう。
(グラッソネッリ自身は無神論者だそうだが)
そうでなければこの本は世に出る事はなかったのだ。

ファブリツィオ・デ・アンドレの歌、“ドン・ラファエ”の
モデルとなったナポリの犯罪組織NCO(新カモッラ)のボス、
ラッファエレ・クートロは、親族に精神病患者が複数名いる上
本人も逮捕拘禁の際には精神鑑定が行われるほど異常性が
疑われたが、(「マフィアよ、お前は悪魔の子」安田雅企著
荒地出版社より)このグラッソネッリに関してはそういった
鑑定は全く不要だろう。

本書で彼は、ワルで学は無いが、頭が切れ温情に富んだ、
素晴らしく統率力のある若者の半生をまざまざと描写している。
行動力の面だけで見れば、これがまだ20代前半の尻の青い
若造のやることかと、舌を巻くほどのしたたかな人生を
送っているのである。
イタリア男らしくファッションには常に気を配り、女性に
対してはドン・ファンばりの情熱で相手を自分のとりこに
してしまうのだ。
こんな危ない男には近づかないほうが無難であるが、
危険なほど魅力が増幅するに違いない。
動画サイトで現在のグラッソネッリの映像をいくつか
見たが、さすがに20年以上服役しているせいか、どこか
人生を達観したような雰囲気が見て取れる。
もし彼が塀の外へ出られるようなことがあれば、それは
イタリアにマフィア絡みの犯罪がなくなったからという
ことになる。
だがイタリアという国が存在する限り、そんな夢物語は
決してあり得えないのだ。

記事執筆:Letterina

画像

早川書房のサイト
http://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000013555/

以下、本編に出てきたイタリアの歌を列挙する。
70ページ:
ロミーナ・パワー Il ballo del qua qua


ファウスト・レアーリ A chi


アドリアーノ・チェレンターノ Azzurro


328ページ:フランチェスコ・デ・グレゴーリ Rimmel


376ページ:ミーナ L`importante e` finire


379ページ:パッティ・プラーヴォ Pazza idea



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