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zoom RSS なんらかの事情 岸本佐知子著 ちくま文庫:めくるめく岸本異次元ワールドへの扉

<<   作成日時 : 2017/07/19 12:57   >>

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作者は四捨五入するとすでに100歳に到達する
という。
このアバウトな年齢感覚は、私の場合「バカボンの
パパ」が基準になる。

先日の蒸し暑い日。
私は肌身離さず腹部を覆っているウールの
腹巻をつけ忘れてしまった。
はっ、いけない!
丹田を、丹田を守らなければエネルギーが
だだ漏れしてしまう!
バカボンのパパよりもすでに年上の私には、
エアコンの冷えから体を守る腹巻は盛夏であっても
手放せないアイテムであるが、バカボンのパパ
よりも若い時分には必需品ではなかった。

つまり今の私にとって「まだ若い時」と「もう若く
ない」年齢の境目はバカボンのパパなのである。
今のところ作者のように「四捨五入で100歳」と
数えるほど大雑把ではないが、「バカボン
のパパ基準」が中途半端に思える頃には
「四捨五入で100歳」が便利であろう。

作者はまた、自家製のジャムを保存するために
空き瓶を大量にため込んでいるという。
フランス製の赤のギンガムチェックのふたの瓶は
ナタリーという。(それを作者は片づけ選別の時に
初めて知った。)
彼女の夫は黒オリーブの入っていたのっぽの
瓶である。
きっと、ガストンとかアントワーヌとかいう名前に
違いない。
いや、もしかしたらイタリア産の可能性もある。
ならばデジデーリオとかトンマーゾと呼ばれて
いたかもしれない。

そして英語の翻訳家である作者は、本書で深淵
かつ知られざるひらがなの権力闘争をつまびらかに
語っている。
曰く、“ひらがなの「ん」は王様気取りの「あ」を
出し抜いて、いつか五十音の先頭に立つ”という
日本語の言語・発音形態を根幹から揺るがす、
恐るべき野望を抱いているのだという。

ところで私がイタリア語を勉強し始めた頃、
活用変化によって珍妙奇天烈な音に聞こえる
動詞があることを発見した。
その一つがosservareオッセルヴァーレである。
気付く、観察する、見守るという英語のobserveに
相当する。
この動詞は接続法半過去の三人称複数形では
osservasseroオッセルヴァッセロという発音になる。
思わずできもしないバック転を2度、(オッセルで
1回目、ヴァッセロで2回目)繰り出してしまい
そうになる。

さらに重要動詞stareスターレに至っては冗談の
域である。
接続法半過去の二人称複数形で、stesteステステと
発音する。
ステステ。
初めて参考書でこれを目にした時は、きっと何かの
間違いだと思った。
そうだ、誤植だ。なんたること。
念のために他の文法書や辞書を確認したら、誤植では
なかった。
ステステ。
何ゆえイタリア人はこの重要動詞を「ぱんぱん」とか
「もふもふ」とか「ぴたぴた」などの擬態語のような
発音にしてしまったのか。
「いや、だって、そういう動詞活用の規則だから、
間違ってないし」と言うのか。
自国の言語の発音にとことんこだわるフランス人
ならば、「この動詞は規則通り語尾変化をすると
耳馴染みがよろしくないから不規則動詞にしよう」と、
後世の仏語学習者を暗記地獄へ突き落す暴挙を
必ずや強行する。

それから自分は人生のどん底に落ちてしまったと
感じた時には、最終章「やばさの基準」のページ
を是非開いてみよう。
自分の悩みがごくごくちっぽけなものだと感じる事
うけあいである。
(ああピロロ、あんたは本当に大変な目にあって
しまった)

さて、240ページのこの文庫本は、持ち運びにもって
こいの薄さである。
640ページある推理小説の文庫本を通勤かばんに
入れた日には、「私は何を間違ってかばんに
漬物石を放り込んでしまったのか」と茫然としたが、
この本ならばそんな心配は無用である。

ただし、電車やバスの中で本書を読む際には注意が
必要だ。
ぐふぐふ笑うのを人前で懸命にこらえているのに、
臓器センサーが反応して止まらなくなってしまう
可能性がある。
「あたまがおかしいです」「あたまがおかしいです」
「あたまが・・・・・」

記事執筆:Letterina

筑摩書房のサイト
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480815163/

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