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zoom RSS 大鎌殺人と収穫の秋 F.クルプフル、M.コブル共著 ハヤカワ文庫:受難続きの中年警部クルフティンガー

<<   作成日時 : 2017/07/24 12:47   >>

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最初に書いておくが、本書は好き嫌いの評価が
かなり極端に分かれそうな内容だ。

前作「ミルク殺人と憂鬱な夏」を既に読んでいる
読者は承知しているだろうが、このシリーズは
南ドイツの田舎町を舞台にした警察小説である。
ゆえに南部ドイツ語の方言が随所に出てきて、
特に小説の舞台であるアルゴイ方言でしか
話さない局長ローデンバッハーの台詞まわしは、
口に物がつまったようなうごうごした表記に
なっている。

ディテールは(意図的に)田舎臭く、殺人事件の
捜査とは直接関係なさそうな、主人公クルフ
ティンガーの家庭環境やら(今回は息子の
マルクスも登場)、何だか良く分からないスピリ
チュアル製品やら、物理的に臭い警部の自家
用車やら、前作にさかのぼる地元の神父との
確執やら、なにより地元にまつわる数々の
逸話や伝承が登場する。
これらのエピソードをまるごとひっくるめて
楽しめる余裕がある人は本書を手にとっても
問題は無い。

だが、本筋に関係ないエピソードが多すぎて
作品全体に締まりが無いとか、そもそもドイツの
小説ならベルリンとか、ハンブルクとかミュンヘン
とか大都市に舞台設定するべきで、どこにある
のか知らない田舎には興味がないという御仁
にはお薦めしない。
特に本作は作者ふたりの「郷土愛満載」がこれ
でもかと描写されているので、このあたりを
「うっとうしい」と毛嫌いする推理小説愛好家が
いてもおかしくはないだろう。

さて、シリーズ2作目である。
パンパカパーン!!
訳者あとがきから先に引用するが、どうやらシリーズ
刊行が決まったようである。
3作目からは日本人の登場人物がお目見えする
とのこと、まずはこれから先もクルフティンガー警部に
会える事を喜んでおこう。
そうなると、帯の惹句の四文字熟語が毎回楽しみ
になる。
今回の帯は「捜査難航!五里霧中!わが家にいても
波瀾万丈!それでも事件は解決します」
そしておまけに「負けるな頑張れ恐妻家警部」
の文字。
思わずエールを送りたくなるような主人公、警部
クルフティンガー。
警察小説物のキャラクターとしては少々異色かも
しれない。

事件捜査もさることながら、彼の私生活における
気苦労が、読者に同情を掻き立たせるほど数多い
のである。
いや、命にかかわるような大ごとではない。
どちらかと言うと、大小含めて些細なことである。
しかも、警部の内弁慶で、頑固で、不器用な人柄
のせいで自らやっかい事を生み出している傾向
がある。

本作でもその存在感が半端ではないドクター・
ラングハマーは、警部にとって人生の弱点克服
のための指南役のような人物で、切っても切れ
ない脇役である。
妻のエリカとこのドクターの存在がある限り、
中年警部クルフティンガーシリーズは未来永劫
続きそうだ。
なにしろ殺人事件が起こらなくても、警部の日常
生活だけで本が書けそうなくらい、笑いのツボが多い。
(スピンオフでそんな作品があったら面白いかも。)

そして、本作ではちょっとした雑学を仕入れる
ことができる。
「フランドル派バロックの巨匠とは誰か?」
「虫の呼吸法の呼称は?」
「葉緑体とは何か?」
「あぜの草刈りに使う鎌の刃の特徴は何か?」
正解は本書で確認してみよう。

尚、クルフティンガーの大好物はプラムケーキだと
本書にあるが、わたしは個人的に好きではない。
ドイツのプラムは実が小ぶりのプルーン種で、
酸味がかなり強い。

20年前ミュンヘンに滞在していた時、下宿先でたまに
デザートとしてお手製のプラムケーキが供されたが、
あまり口に合わなかった。
とにかく酸っぱいのである。
それでも、フキとセロリを足して2で割ったような
野菜、ルバーブ(食用の赤いタデ科植物)の
砂糖煮だとか、米を牛乳で煮てグラニュー糖を
ぶっかけて食す「ミルヒライス」などよりはまだ
マシだった。

本書でもちらりと「レーバーケーゼ」について
書かれているが、ケシの実付きのカイザー
ゼンメルにこのレーバーケーゼを挟んだサンド
ウィッチは絶品である。

また、ミュンヘンの屋台や飲食店ではリンゴ
ジュースに炭酸水を混ぜた「アプフェルショイレ」
なる飲料がある。
「マス」と呼ばれる大ビールジョッキで出される
ので、毎年9月に開催のオクトーバーフェストを
訪ねる際、下戸にはビール代わりにこちらを
お薦めする。
まあ、ビールの銘柄ならアウグスティーナーか
パウラーナーが妥当だが・・・・・・・あ、何の話
だった?
ミュンヘンじゃなくて、アルゴイ?
それって、どこ?

記事執筆:Letterina

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