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zoom RSS 海岸の女たち トーヴェ・アルステルダール著 創元推理文庫:強き者、汝の名は母なり

<<   作成日時 : 2017/07/05 07:53   >>

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アリーナ・サルカノヴァは必死だった。
帰国予定を過ぎても夫がパリから戻ってこない。
電話連絡もない。
ひょっとして自分は捨てられた?
彼の子供を身ごもったばかりだというのに。

失踪したジャーナリストの夫、パトリック・
コーンウォールを探すため、アリーナはニューヨーク
からパリへ飛んだ。
夫が記事にするためにフランスで追っていた
社会問題の裏には、フランス人実業家アラン・
ティエリが代表を務めるコンサルタント会社
「ルグス」が関わっていた。
会社の表向きの業種とは裏腹に、内情はアフリカ
大陸とヨーロッパ大陸を橋渡しする人身売買組織
だった。
一介のアメリカ人ジャーナリストごときが告発でき
るような相手ではなかったのである。
やがてアリーナはパトリックが組織に「消された」
ことを知る。

アリーナはフランス、スペイン、ポルトガルと
パトリックの痕跡を追って、遂に彼の遺体が発見
されたスペインのタリファ海岸の現場までたどり着く。
彼女はパトリックが命がけで追っていたネタを、
ニューヨークの出版社「ザ・リポーター」誌から
世の中に向けて発信したが、巨大な組織に歯向
かった代償を払うことになる。

本書の帯に「驚倒必至」と惹句が踊っているので、
出版社はまた大げさなうたい文句で読者を騙そう
としているなと用心して読み進めたが、確かに
主人公の“捜索の旅路”が“壮絶な復讐劇”になる
とは思いもよらなかった。

ただ、物語の最初のほうから主人公アリーナの
火を噴くような激しい性格が描写されていて、
(バレリーナのレイアとの口げんか)これは何か
ストーリー展開に関わるようなエピソードかも
知れないと気になっていた。
そしてその後の彼女の遠慮のない言葉使いに
「この女、何かやらかすかも」という予感がますます
強まってきた。

とにかく怒りを支えに行動を起こす主人公なのである。
パトリックがリスボンに向かった事を知るに至っては、
“わたしは相手を睨み据えた。ハイスクール時代には
こういう女生徒を何人も潰してきたものだった”
とある。
恐ろしい事この上ない。

犯罪とは無縁だったのに、夫を探す事で結果的に
事件を引き起こすことになってしまったアリーナ。
「嵐を呼ぶ女タイプ」のヒロインと言うべきだろうか?
間違っても嵐に巻き込まれて「仕方なくこんなこと
になってしまいました」という受動型の人間ではない。
なにより彼女の生への執着は、これから生まれ出て
くる子供にあるという、女性ならではの底力にあるの
ではないか。
こういう破天荒な登場人物は、男性作家にはきっと
想像もつかないのではないかと思う。

最強の人類、それは“母親”なのだ。

記事執筆:Letterina

トーヴェ・アルステルダールのサイト
http://www.tovealsterdal.se/

東京創元社のサイト
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488241049

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