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zoom RSS ささやかな頼み ダーシー・ベル著 ハヤカワ文庫:捕食者は高みから見物する

<<   作成日時 : 2017/07/10 12:41   >>

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“人間のふりをした毛足の長いバスマットも同然なのに。”

つい最近ハリウッド映画のキャストが発表された
ばかりの注目作である。
カテゴリー分けをするなら、この頃よく目にする
読後感の悪い嫌な感じのするミステリ、通称
「イヤミス」に該当するだろう。

幼稚園のママ友であり、唯一無二の友人エミリーが
失踪して、彼女の行方をつかむため八方手を尽くす
ブロガーのステファニー。
エミリーの息子ニッキーを預かっている責任も
あり、ブログを通じて捜索情報を発信していたが、
やがて湖から彼女と思われる溺死体が発見された。
実はエミリーのイギリス人の夫、ショーンは妻が
失踪する1か月前に200万ドルの保険金の契約を
結んでいたという。

それからよくある夫が妻を殺害した嫌疑をかけられ
それを払しょくするようなストーリー・・・にはならない。
第一部はステファニーの語りで、彼女は人には口が
裂けても言えない暗い過去の秘密があり、少し前に
夫と異母兄を二人一緒に交通事故で亡くしたシングル
マザーであることが綴られている。
引っ越し先の田舎に馴染めず、友達と呼べる人物は
息子同士が同じ幼稚園に通っており、子供の迎えの
時にたまたま視線が合ったエミリーだけだった。

そして第二部。
ここからが本番である。
死んだはずのエミリーが語り手として登場する。
実はこの小説の主人公はステファニーではなく、
この「死んだはずのエミリー」なのである。
この女、とにかく悪辣である。
なにしろ保険金詐欺を計画したのは彼女本人なのだ。
良家の子女であるエミリーだが、人間としてろくな
育ち方をしていない。
傲慢で、己の欲望を満たすためには夫だろうが友人
だろうがチェスの駒か、機械の部品くらいにしか
思わない。
いや、“カモ”という表現を使っていた。
賭けごとの標的だ。
そもそもエミリーにとってステファニーは友人でも
なんでもない。
ステファニーは彼女の計画を実行に移すための
“奇術師の助手”にすぎない。
だが、すべて思い通りに行くわけではない。
保険金をまんまとせしめ、ショーンと息子と共に
憧れの海外生活を画策していたものの、当初の
完璧な計画は夫の「裏切り」によって変更を余儀
なくされてしまう。
加えて、「エミリーの遺体」を不審に思う人物が登場
するのだ。

何としても保険金を手にする。
邪魔立てするものは許さない。
エミリーの行く手を阻むものは、彼女の操るブルドーザー
で踏みつぶされる。
あとには使い古され、ぼろぼろになった雑巾のような
犠牲者が、累々と荒れ野に放り出されているのだ。

そして狡猾なエミリーの対極として、ステファニーの
愚鈍ぶりが後半に行くほどもどかしい。
しっかりしなさい、ステファニー!
本当の親友がそんな頼みをするものですか!!

他人を誹謗中傷する文言はいろいろある。
“人間の面の皮を被ったけだもの”とか。
だが、冒頭の一文“バスマット”には仰天した。
あれはエミリーのステファニーに対する罵詈
雑言なのだが、ネズミでもゴキブリでもなく
“バスマット”
である。
こんなひどい悪口はついぞお目にかかった
事がない。

L・Sヒルトンの「真紅のマエストラ」の主人公
ジュディスも、自分の目的を果たすために目の
前の敵を容赦なく殺害してきた。
罪の重さならばジュディスのほうがはるかに手に
負えない凶悪犯と言えるが、あの作品は主人公が
どこまで成り上がれるか、サクセスストーリーの
側面もあった。
ところが、この「ささやかな頼み」は物語の終わりに、
ヒルトンの小説のような爽快感はいっさい無い
のである。

少なくともわたしは、最後にこう思った。
「この悪魔のような女に、誰か正義の鉄槌を下してくれ!」

記事執筆:Letterina

早川書房のサイト
http://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000013541/
映画化の記事
https://movie.jorudan.co.jp/news/celeb_20762/
ダーシー・ベルのfacebook
https://ja-jp.facebook.com/Darcey-Bell-1766334463617180/

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