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zoom RSS 刺青の殺人者 アンドレアス・グルーバー著 創元推理文庫:闘う肝っ玉母さん大活躍

<<   作成日時 : 2017/07/12 12:28   >>

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とにかくこのグルーバーというオーストリア人の書く
小説はおもしろい。
前作「夏を殺す少女」もぐいぐい読ませる筆力で、
作家としての実力を発揮したのであろうが、シリーズ
第2弾となる本作も大いに楽しめた。
続編ではあるが全く新しい事件が起きるので、前作を
未読の読者が手に取っても全く問題ない。

前回の事件から3年後である。
ドイツ東部(旧東ドイツ)のライプツィヒ刑事警察の
警部ヴァルター・ブラスキーは相変わらず男やもめの
ままだ。
前作で知り合い、懇意となった心理療法士ゾーニャとは
どうやらその後進展がなかった模様である。
とはいえ、一人娘のヤスミーンは無事に成長し、
イギリスへ語学留学のため旅立つところである。
それに持病である喘息の症状を緩和するため、
目下のところ禁煙にも成功している。
そして新しい事件発生である。

貯水池から女性の変死体が発見された。
身元はすぐに判明。
チェコ生まれで19歳のナターリエ・スコバ。
ベルリン在住の麻薬常習者だ。
ナターリエの母親、ミカエラが娘の遺体の確認の
ためにベルリンからヴァルターのもとへやって来る。
ここから物語のギアが一足上がるのである。

前作「夏を殺す少女」の中での宣言通り、ウィーンの
女性弁護士エヴェリーン・マイヤースは独立して
自身の法律事務所を構えた。
そこへ殺人容疑をかけられた依頼人、コンスタンティン
医師が彼女を弁護人として依頼するためにやって来る。
だがこの依頼人、いかにも怪しい。
作者が読者に向かって、まるで「さあ、これが犯人だ!」
と最初にネタばらしをしているようにさえ思える。

前作ではオーストリアとドイツの2つの国で起こった
事件がつながる仕掛けだったが、今回はさらに旧共産圏
の東欧、チェコが物語に関わってくる。
鉄のカーテンが存在している時代ならばとてもこのような
状況設定は考えられない。
パスポートコントロールも厳しかったし、ドイツ人の
刑事が東側の国であれこれ嗅ぎまわる、いや捜査
するのは、待てよヴァルターはもともと東ドイツの
出身だから・・・。
話がそれたが、旧ワルシャワ条約機構の加盟国
であっても、シェンゲン協定に加盟している諸国間
であれば往来は自由だ。
(ちなみにEU加盟国とシェンゲン協定の加盟国は
同一ではない)

長女を殺した真犯人をつきとめ、行方不明の次女を
捜索する不屈の精神のチェコ人女性、ミカエラ。
彼女の独壇場となる第7部は息もつかせぬ、まさに
怒涛の展開である。
やはり母は強い。
とてつもなく。

この作家は中だるみや余計な回り道がなく、読者に
緊張感を持たせたまま最後まで読ませるという、
基本に沿った文章構成で作品を仕上げている。
場面を切り分け、時折謎めいたシーンを挿入して
読者を盛り上げて行く手法は何もグルーバーの専売
特許というわけではない。
けれど大風呂敷を広げて、わざわざ読者を混乱に
落とし入れるような「技巧派作家」とは明らかに一線を
画している。
読み終わったあとで読者が頭を抱えてもう一度ページを
めくり返すような作風の物書きではない。
あくまでもストーリーはシンプルでわかりやすく。
そして、すっきりとした気分で本を閉じられること。
本作はグルーバーの小説家としての信条が伝わって
くるかのような作品である。

ただひとつ悲しいことに、前作からおなじみのあの
登場人物と本作で別れを告げなければならないのは
残念至極である。

記事執筆:Letterina

東京創元社のサイト
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488160081

アンドレアス・グルーバーのfacebook
https://www.facebook.com/Gruberthriller/

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