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zoom RSS 晩夏の墜落 ノア・ホーリー著 ハヤカワ文庫:機体墜落と人間群像

<<   作成日時 : 2017/08/14 12:32   >>

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「いつから、事実よりもそれがどう見えるかが
大事になったんだろうね?」

9人の死者のリストがある。
年長が56歳、最年少は9歳。
プライベートジェット機の乗務員と、その乗客。
ただし、搭乗者は全部で11名。
生き残ったのはジェット機の所有者の息子で
4歳のJJ・ベイトマンと、たまたまニューヨーク
行きの便に誘われたうだつの上がらない画家、
スコット・バローズ。

海上に墜落した飛行機事故から生還した
スコットを中心に、故人となった登場人物の
事故前の人生が語られる手法の小説。
“十時間後、彼は死ぬことになる。”

幼児を救った英雄であると同時に、事故原因の
追及の際、絵画のモチーフが偶然にも事故や
災害といった悲劇を描いていたスコットが
容疑者にされてしまう理不尽。

すぐに惨劇が幕を開ける。
つまり、結果が一番最初にある。
急ぎ足で乗務員と搭乗者を紹介しておいて、
次の瞬間にはもう問答無用の機体墜落である。
日付は2015年8月23日。
スコットと、JJを除いた犠牲者の人生はこの
日付より前の過去となって読者に披露される。

生き残りとなったスコットは「サバイバー」
として人々の注目を浴びる事になる。
ただし世の中、好意だけではない。
“知る権利”持論を振りかざし、悪意をむき
出しにしてスコットを追いかけるマスコミの
存在がある。
彼はもはや、離れ小島の掘っ立て小屋で犬と
一緒に暮らしている無名画家ではなくなって
しまった。
今や誰もがみんなこの画家を知っている。

スコットだけの物語なら、この物語はごくあり
きたりな「墜落原因究明を中心とした推理小説」
のカテゴリーにあてはめられるだろうが、作者
ノア・ホーリーの思惑はもう少し違うところへ
向かっている。
“偶然に”“たまたま”一緒の飛行機に乗り
合わせた、ひとりひとりの断ち切られてしまった
人生を、これでもかと克明に描くことで、人命の
はかなさをあぶり出している。
あまりにも唐突な運命の幕引き。

ボイスレコーダーで明かされる事故原因は
果たして、唯一の真実だろうか?
搭乗前、ベン・キプリングが耳にした二人の
整備士の会話は何を意味するのだろう?
彼はタバコを付けた男の横顔の何に気を
とられたのだろう?

ところで、“偶然”にもこの小説の主人公の
名前はスコット、そしてマギーという名の女性が
登場する。
ロバート・クレイスの著作、「容疑者」「約束」の
ロサンゼルス市警の巡査スコットと警察犬マギー
と同じネーミングなのだが、これも偶然のなせる
わざか。

記事執筆:Letterina

早川書房のサイト
http://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000013608/

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