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zoom RSS 狩人の手 グザヴィエ=マリ・ボノ著 創元推理文庫:もし“昔堅気”がお好みなら

<<   作成日時 : 2017/12/12 12:38   >>

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「・・・あなたがいくら敏腕刑事だからって、
はっきり言わせてもらいますよ。
警察はもう、そんなやり方はしないんです。」

今更言うまでもないが、推理小説の醍醐味
というのは事件のトリックだけではなく、主人公
の刑事/警察官、もしくは探偵がどれだけ魅力
的な人物であるかに比重がかかっている。

本書の主人公、マルセイユ警察のミシェル・ド・
パルマは名字に貴族の称号がついているせい
もあって、“男爵”の異名を持つ。
しかも大のオペラ好きで47歳の働き盛り。
若いころから実績を上げている、自他共に認
める敏腕刑事である。
なにしろ本人の口からも「・・・まかせてくれ。
いままでだって、ホシは必ず挙げてきた。
こう見てもおれは、ナンバーワンの刑事なん
だ。」という台詞が出るくらいである。

洒落者で、頭脳で勝負するアカデミック系の
紳士然としたキャラクターかと思いきや、この
男、激昂しやすい上、頭角を現し始めている
部下に警戒感を抱くような嫉妬深い性格である。
いわゆる、「おまえの手柄はおれの物」を主義
にしている部下を潰すタイプの上司だ。
しかも、女のケツをしょっちゅう追いかけてい
るような欲求不満をたぎらせていて、女性読者
のひんしゅくを買いそうな輩である。
実際、事件の関係者の女性と関係を結んで
しまうくらい下半身が緩いのが難点である。

犯罪物のフランス映画で、警察官の荒っぽい
取り調べシーンを目にすることがよくある。
現在のフランス警察が野人の集まりである
とは言わないが、どうやらド・パルマが若き
頃は拷問まがいの尋問もまかり通っていた
に違いない。
その名残が、いまだに彼の捜査方法に表れ
ている。
それゆえ部下のマクシム・ヴィダルが冒頭の
台詞をド・パルマに向かって吐き出すのだ。

1982年、担当した事件の捜査でド・パルマは
自身の内側にある「パンドラの箱」を開けてし
まった。
法の下に仕える警察官が、正義の鉄槌を下
す処刑人となった瞬間だ。
以来、制御できなくなった暴力のマグマが彼
の行く所、しばしば噴出することになる。

女性読者として聞き捨てならない部分がいくつか
あったので、取り上げておく。
167ページ、ド・パルマの台詞「・・・部屋には、
両親や学校の写真一枚なかった。あんなのは
初めてだ。
冷たい女だったんだろう」
そして169ページ、アンヌ・モラクシニの台詞
「・・・43歳で独身。家族なし。そんなふうに暮ら
すなんて、悲しいじゃない」
もちろん、本書はフランス人作家によるフランス
語の小説だ。
彼らの精神構造によれば、上記の文章はフラ
ンスの一般常識的な思考にのっとって書かれ
ているのだろう。
しかし、個人的にひっかかるのだ。
カチンとくる、と言ったほうがいいだろう。

この本がフランスで刊行されたのは2002年、
通貨がユーロではなくフランであること、登場
人物の誕生日と年齢から判断すると、本作が
執筆されたのは2000年か2001年だろう。
とするとド・パルマの現在の年齢は64歳くらい。
なるほど、昔堅気の刑事か。
捜査のためなら参考人の横っ面を張り倒す
こともいとわない。
この主人公がお気に召したのなら本書を楽し
める事だろう。
個人的には、「アデュー、コマンダン・ド・パルマ、
もうお付き合いはしません」と言っておくことに
する。

本文一か所、人名表記に誤りがある。
105ページ、イタリアのメゾソプラノ歌手シミオ
ナートのファーストネームが“ジュルエッタ”と
なっているが、正しくはジュリエッタ(Giulietta)
である。

記事執筆:Letterina

東京創元社のサイト
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488271046

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