危険な男 ロバート・クレイス著 創元推理文庫:神よジョン・チェンにふさわしい恋人を与えたまえ

「なにが起きたのか話せ」
「ジョー・パイクざたが起きた。相談したい」


エルヴィス・コール、1987年の「モン
キーズ・レインコート」登場時35歳。
2021年の現在は満69歳。(のはず)
エルヴィス・コール、1993年の「ぬき
さしならない依頼」の時は39歳。
2021年の現在は満67歳(・・・・・)。

コールの相棒ジョー・パイク。
コールとは1973年からの付き合い。
両腕の赤い矢の刺青は海兵隊員時代
ヴェトナム従軍の際に入れた。
除隊後コールは見習いの私立探偵、
パイクは制服警官として仕事中に出
会い、コンビを組むことに。
ヴェトナム戦争に従軍経験があるな
らパイクも当然60代・・・なのだが、
いや、これはなかったにしよう。
磯野家の時間経過と同じ事。
何度春が巡ってこようがカツオはラ
ンドセルを背負った小学生だし、タ
ラちゃんはよだれかけをつけた幼児
なのだから。

何者かに突然誘拐されそうになる銀
行員のイザベルは22歳。
彼女の同僚や親友はパイクの男性的
魅力をいち早くキャッチしてイザベ
ルを焚きつけるし、イザベル本人も
なんとなくパイクが気になる。
若い女性にこれだけアピールすると
いうことは、ジョー・パイクの現在
の年齢は40歳前半と考えてよさそ
うである。
それにこれだけのアクションシーン
は、体力のピークである40代を設定
して書かれているのだろう。
ということは相棒のコールも恐らく40
代半ばから後半だろうか。
ガンファイトが目玉のジョー・パイク
ものは、主人公に老いる事を許さない
作品だ。
活字の中でコール・アンド・パイクは
永遠のヒーローとして年月を超越する。

たまたま遭遇した拉致現場で、女性銀
行員誘拐事件を未遂に終わらせたパイ
クを、市警の刑事ドレイコとブラウン
は半ば犯罪者扱いするのだが、パイク
の行動の意味を彼らはきちんと把握で
きない。
“なぜそんなことをしたのか?”
シリーズ第一作目のコールの台詞に答
えがある。
・・・・「日本のサムライをご存じですね。
戦士は秩序を必要とする。それがパイ
クです。」(「モンキーズ・レインコート」
新潮文庫271ページ)

本作はどうしてもパイクのアクション
シーンに目が偏りがちになるのだが、
法執行官同士の絆が描かれているのも
忘れてはならない。
元連邦保安官、ケンプの殺害捜査でも
保安局のグレッグは自分の組織を“小
規模の家族”に例えてなんとしても犯
人を検挙しようとコールに協力を求める。
そして修羅場となった映画監督の家で
は、ブラウン刑事と(コウノトリのよ
うな体つきの中年女性の)ドレイコ刑
事がお互いの無事を確認してひしと抱
き合うのだ。
特にドレイコは感じの悪いキャラクタ
ーとして描かれており、注目に値する
登場人物ではないのだが、体を張って
仕事をしている場面を見せられると、
思わず胸にじーんと響く感覚を覚える。
(エモい、というのか?こういうの?)

いただけないのはラストの本丸襲撃部
分だ。
こんなにあっさりと黒幕を倒せるのか?
部下やボディガードはどうした?
農場だから警備システムはないのか?
せめてトマス・ペリーの「老いた男」
のクライマックスの突入シーンのよう
なスリルを感じさせて欲しかった。
(もっとも、こちらはこちらで“ええ!?
これで終わり!?ほんとに!?”というラス
トなので、褒められたものではないが)

最後の落とし前をつけるため、セスナで
飛ぶジョー・パイク。
死刑執行人として、イザベルの脅威を
取り除くために無償で命を賭ける男。
こんな危険な男に惚れてはいけない。

記事執筆:Letterina

クレイス作品のレビュー
「容疑者」
https://claudiobaglionifanblognippon.at.webry.info/201705/article_19.html

「約束」
https://claudiobaglionifanblognippon.at.webry.info/201709/article_4.html

「天使の護衛」
https://claudiobaglionifanblognippon.at.webry.info/201710/article_4.html

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